ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

妄想にさえお前が必要(ss)



ある組織が飛段を勧誘にやってきた。俺への働きかけはよくあるが、飛段を選ぶのは珍しい。飛段は勧誘を断り、俺はこっそり安堵したのだが、貴様を我慢できるのは俺ぐらいのものだろうと軽口をたたいてから様子がおかしくなった。ハァ?別に我慢してくれと頼んだ覚えはねーし、むしろ我慢してんのはこっちの方だぜクソジジイ。のろまな雑魚のくせに調子に乗るな、殺すぞ。それをオレに言うか角都よ、と返してほしかったのだが、飛段は冷めた目でこちらの顔をまともに見返し、調子に乗ってんのはテメーだろ、と言った。勘違いすんな、たまたま今はテメーと組んでるがオレは一人でもやれるしその気になりゃ誰とでも組むぜ。俺はそれ以上何も言わず、飛段もそれきり黙ったままだ。誰とでも組む、という奴の言葉のせいで、俺は飛段が誰かほかの者と睦みあうさまを想像し、不快なくせに暗く興奮する。一人で好きなように生きられると思っていたが、相手を推し量り利用することで戦い方も日々の暮らしも深みを増すことを知った今、俺はこれを失うことを恐れるようになってしまった。