ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

むごたらしい死にざまには慣れているが、そのせいか、ひょんなことで死んだ者のことが忘れられない(ss)



若かったころ、抜け忍探索の任務をしたことがあった。探索範囲が広範囲に及んでいたため隊は分散せざるを得ず、俺は同僚と二人で空気の薄い高山の尾根を縦走した。雪に覆われた稜線を進んでいたとき、背後から叫び声が聞こえ、振り向くと白く硬い斜面を同僚が滑落していくところだった。何らかの肉体改造を経ていない忍者はつまるところただの人間だし、俺たちはそのときかなり疲弊していたのだ。同僚はチャクラを練り、やれることをすべてやったようだった。多分クナイで落下を止めようとしたのだろう、よく滑る岩のような雪肌にひっかき傷があり、クナイがいくつか落ちていたから。ほとんど峰一つを滑り落ちてしまった同僚のそばにやっと俺がたどりついたとき、奴は体中を骨折し、片脚を失っていた。俺は同僚の傷を縛りふさいで止血をし、チャクラを流しこんで内臓の損傷をいくらか治したが、それ以上のことはできず、奴をおいて助けを呼びに行くことにした。防寒具と食料を残して下山した俺は、ふもとの里の国境警備兵から取り調べを受けたが、いくら説明しても彼らはこちらの言い分を信じなかった。いくら忍者でもそのルートを下りられるわけがない、と彼らは言った。多分遭難して見当を失ったのだろう、どちらにせよ山に残った者は助からない、この季節あの山に登るのは自殺行為なのだ、あなたが一番それをよく知っていると思うが。チャクラを回復した俺は滝隠れへ式を飛ばして指示を仰ぎ、届いた指令通りにその後は単体で任務を続行した。終了後、里へ戻った俺は報告書を提出したが、事故を大きく取り上げる者はなく、俺を責める者もなかった。そのため、俺は一人であのときのことを繰り返し考えるはめになった。そうしてわかったこと。あの状況で同僚が助からないことは明らかだったのに、任務よりも救助を優先したことは痛い失態だった。時間を無駄にして他国に滝隠れの内情を悟られる危険を犯したことだけではない。酷寒の道中、俺はあの粗末なマントと兵糧丸をおいてくるべきではなかったと繰り返し後悔した。二人死ぬより一人生きた方がいい。それでもあのとき俺がマントを脱いだのは、同僚が、このことはお袋に黙っていてくれ心配するから、と言ったからなのだ。あんな状態で奴は自分が生き延びることを疑っていなかった。俺は奴の勇猛さに敬意を払い、マントを脱いだのだが、あのような思いは二度としたくはないしその後の苦労もまっぴらだ。幸いなことに今の相棒は死なない男で、もう俺がマントを脱ぐことはない。