2014-01-01から1年間の記事一覧
いつものことだが些細なことで角都と飛段は口げんかをし、言い負けた飛段が、てめーぜってー呪ってやる、と吐き捨てた。呪うだと、貴様ごときに何ができるというんだ。オレをなめんなよ、本気になりゃてめーなんかあっと言う間にズタズタのグチャグチャだぜ…
抱いていた飛段が朦朧としながら、好きだ、と言った。主語がない曖昧な言葉を俺は自分に都合よく解釈し、そんなに俺が好きかと問いかけると飛段は何度もうんうんと頷いた。何を言われているかもわからないくせにと思うと妙な苛立ちと罪悪感がわいてきて、俺…
木イチゴがたわわに実る藪のそばで休憩した。それまで足をひきずって歩いていた相棒だが、休みもせずにうろちょろと藪をめぐり、せっせとイチゴを食べている。じきに戻ってきたのを見ればコートの裾を籠代わりに熟れたイチゴを山ほど摘んでいる。オメーも食…
大きな取引を終え、角都のアタッシュケースがほぼ空になった。軽くなったそれを持たせてもらった飛段は、ケースを肩に担ぎ、いかにも与太者らしくあたりを睥睨しながら街中を歩いた。あんな実用一点張りのカバンを持ちたがるとは、と角都は思うが、飛段はご…
角都がオレの中へ入ってきたので呼吸が浅くなった。暑い日、川へ入るときの感じによく似ている。いつものことだが胸が中から押される苦しさにはどうしても慣れることができず、ハッハッと息をするオレに角都が、そういえば××の情報屋から連絡があったか、と…
賞金首と飛段がやりあっている。さまざまな術を使う相手に対し、飛段の戦い方は実に単純で、突起物だらけのビルの壁面を駆け上がり、飛び降り、鎌を振り回す。角都はそれを見守り、機敏だが攻撃も防御も穴だらけで雑だ、後で言ってやらねば、と考えている。…
遠く離れた地での一人仕事を済ませてきた角都のポケットに紙切れが入っている。見れば情交中の飛段の写真で、しかもぎょっとするような構図である。驚いた飛段がいつ撮ったのかと尋ねると、出かける前の晩にな、と平気な顔で答えてくる。おいおいオメーおか…
横になってからもずっと小言を垂れ流していた相棒がやっと黙ったので、そっちを見たら、目を閉じてじっとしていた。オレはとりあえず小便に立ち、戻ってきても奴が動いていないのでこれは寝たふりじゃねーなと考えた。月が明るくてぬるい風が気持ちよくて遠…
一戦交えたあと、柔らかくぎっしりと生えた雑草の上で仰向けになったままの飛段が、身を離す角都を見上げて、おめぇの体ってマジ世界一だぜ、と言った。どこか幼く古臭い褒め言葉を角都は鼻で笑い、世界一だと、貴様俺しか知らないくせに、と返したが、言っ…
5/1にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。 こあん様 お懐かしいこあん様、ようこそお立ち寄りくださいました。放蕩息子の最後の文は、説明的にせずに短く始末することができず、主体があいまいなものになりましたが、こあん様がほめてくださ…
飛段が一人で出かけ、それきり音沙汰もなかった。その間角都は単独で仕事を請け、ときには遠くへ移動もし、特に不自由もなく暮らしていた。周囲が飛段の不在に慣れてそれを口にもしなくなってきたころ、角都が逗留していた宿の玄関にひょっこりと飛段は現れ…
パンツ一丁の飛段にさるぐつわを噛ませ、椅子に手足を縛りつけて、角都がいろいろやっている。二人の前には別の男がやはり椅子に縛りつけられている。角都としてはその男から金持ち大名の弱みを聞き出したいのだが、手ひどく痛めつけたり殺したりするのは避…
立ち寄った紙屋のおかみが、今日はそういう日だから、と品物に菓子を添えてよこした。角都はいかにも安物のチョコレートキャラメルを断ろうとしたが、隣からの熱心な視線を感じてそれを受け取り、そのまま隣の相棒へ手渡した。すると飛段は包み紙をむいた大…
野宿の穴倉から出るとあたりは眩しいばかりの雪景色。降ってしまえば空も落ち着き、無風の青空に鳥が飛ぶ。角都と飛段は同じ目的をもって腰まで積もった雪をこぎ、枝を広げた大木の下、やや雪が浅いところまで移動すると、各々のズボンから道具を引っぱり出…
2/9にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。 srri様 レスが遅くてすみませんm(__)mご無沙汰しておりますS様! 脱却の二人を思い出してくださってありがとうございます。こんな寒い季節に半ズボンの子どもをホームに立たせておくなんてひどいこ…
角都が仕事の依頼主にクレームをつける。渡された情報の倍の勢力と戦ってきたのだぞ、報酬も倍でなければこちらの気がすまん。状況が説明と異なっていたことは認めるが、しかし、と依頼主は異を唱える。契約は契約だ、状況変化に関する追加支払いの義務は生…
狙っていた賞金首を他の奴に先に狩られちまったもんだから、角都がふてくされている。拗ねたところで何にもならねえだろ、いい加減に忘れろよ、と何度も言ったんだが、むっつりとおし黙って焚火をつつくばかり。相手していられないのでオレは一人でメシを食…
女に振られた男ががめつい守銭奴になるテレビドラマを見て、テメーも女に振られてカネ好きになったんじゃねーのと相棒に聞いてみたら、いやそんなことはない、と答えてきた。オレは隣に座る相棒の顔を見た。なんか変だ答えが素直すぎる。いつもの角都ならこ…
殺風景なビジネスホテルの一室で、退屈した飛段がシチュエーションプレイを提案する。オレはオメーの女の間男でさ、遊びに行ったそいつんちでオメーとかち合ってつかまってぶん殴られて突っ込まれてイきまくるってのはどうよ。ふん、と角都は異を唱える。短…
不動産屋のガラスにびっちりと賃貸情報が貼られている。換金所の外で相棒を待ちながらそれを眺めていた飛段は、「月極」という言葉に引っかかる。北極も南極も角都に教わったが月極は聞いたことがない。飛段は思いを巡らせ、月の北極と南極のことだろうと推…
酒の席で、一緒に飲んでいた情報屋に角都が愚痴をこぼす。俺の連れはな、お前も知る通り下品で愚かで恥知らずでカネ勘定もできない役立たずだ、いくら教えてもものにならん。話題になっている飛段は酔いつぶれて相棒の太腿に頭をのせ、よだれを垂らして寝こ…
移動の途中、相棒がこの近くにいい温泉があると言い出した。急ぐあてがあるわけでなし、寒さも厳しい折、たまには熱い湯に浸かってのんびりするのもいいだろう。予定外の娯楽に心が浮き立ち、足取りも軽くなる。相棒も上機嫌な様子で楽しみだと何度も口にす…
角都が女を買いに行っているちょうどそのときに、オレたちがずっと探していた賞金首が現れた。一人でやり合うなんて考えていなかったオレは苦戦した。正直賞金なんかはどうでもいいんだから逃げりゃよかったんだがそれも面白くないし、ここでオレがいいとこ…
珍しくもないが、角都に叱られた。ホントのことじゃんと言って火に油をそそいでしまった。それでもへらへらしていたら口をきいてくれなくなった。 すみませんでした。もう乳首がかわいいなんて人前で言いませんから。
※題が以前書いたものと酷似していたので変えました。記憶力のなさが情けない…(T_T) 荒涼としただだっぴろい大地がどこまでも続く。太陽は強く照りつけているのに地面には溶けない雪がこびりついている。大小の石ころを積み上げてあるのは多分土地の境を示す…
石ころと砂しか見えない場所で、オレは相棒を待っている。幅の広いひものような道路がゆるくカーブして地平線まで続いている。太陽は真上にあって全然動こうとしない。落ち合う場所である傾いた看板の下だけ小さな日陰になっているが、空も地面もやたら明る…
昼間にやりあった軍隊がレーザー砲を持っていた。たいした武器ではないが追尾機能が厄介で直撃を食らえば俺たちの体など蒸発してしまう。俺は飛段をおとりに使い、その隙に俺自身が武器を破壊する作戦を立てた。すばやく立ち回れ、手足を落とされても後で別…
飛段は、行く先々で喧嘩を売られたり可愛がられたり色目を使われたりとしょっちゅう構われる。老若男女を問わず。そのたびに飛段は喧嘩を買ったり飴玉をもらったり鼻の下を伸ばしたりと忙しい。誰も角都にはちょっかいを出してこない。飛段のように頭の悪さ…
あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 年末に旅行へ行ってまいりました。 そこで撮った写真にある人が写っていました。 ちょっとマジでびっくりしたので、そのびっくりのお裾分けです。 こいつは春から縁起がいいわい!
よい大人のくせに飛段がお年玉をねだってくる。あつかましい、と唸りつつ俺は用意しておいたポチ袋を取り出すが、手渡すのも面白くないのでそれをぽいと奴の足元へ放り出す。嬉しそうに拾い上げながら飛段が、てめーノーコンだなー、と笑う。なんだと。へた…