ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

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私を忘れないで(ss)

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角都と飛段はある大名の母親の護衛を請けた。後を継いだ子に疎まれ、人里離れた隠居所へ送られるのだという噂だったが、いまだにたいそうな金と力を握っており、件の隠居所もなまじな城よりもよほど立派なものであった。道中で一行は襲撃を受けたが、飛段の…

忍ぶ者(ss)

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賞金首を待ち伏せしているんだがとにかく寒い。まだ昼過ぎだというのにもう日が傾いていて、景色は白黒写真みたいになっている。冷えた風がコートと体の間を吹き抜ける。いい加減に引き上げようぜと言ってみたが角都はあきらめず、吹きさらしの岩の上でじっ…

たまに回ってくるツキ(ss)

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なぶって遊ぶうちに生け捕り予定の相手をうっかり殺してしまった。角都は激怒し、オレを殴り蹴り絞めて千切り、移動の時間を確認して裁縫しながら小言を垂れ、それでも怒りが冷めなかったらしく、これで済んだと思うなよ、と凄んだ。ヘマしたことをたっぷり…

感傷(ss)

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外でやるなら立位が一番簡単だ。繁華街から一本入った真っ暗な裏道で、角都は塀に両腕をついた飛段のコートをまくり、ズボンを引き下げる。尻から串刺しにされた飛段が、おえ、と呻く。マジで気持ちわりー。飲み過ぎだ、と角都は言い、飛段の股をこねる。飛…

そんな顔をさせるためにがんばったんじゃない(ss)

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追い続けていた賞金首をやっと探し当てた。と思ったら、少し離れた村に別の高額賞金首が現れたらしい。角都はこっちをオレに任せ、自分は別の奴を狩りに行くと言う。オレはちょっとごねた。後で合流とかめんどくせー、こっちの奴を片づけてから一緒に行こう…

みやげのスペアリブも巻き添えに(ss)

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昔からの友人と飲むと言って出かけた角都の帰りが遅い。というかもう朝だ。飛段はいろんなことに腹を立てている。昨日のいさかいにも、おいてきぼりを食らったことにも、朝まで相棒を待ち続けてしまった自分にも。そのうち、少し前に手に入れた起爆札のこと…

二人で担う(ss)

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仕事を済ませて集金に行くと、依頼主が嫌味を言いだした。邪魔者が簡単に消えたので金が惜しくなったのだろう。角都に睨みつけられると、さすがに不安になったらしく依頼主は渋々ながら全額を支払ってきた。不愉快だったが金さえ手に入れば問題はない。二人…

荒野のホットドッグスタンド(ss)

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炎天下だと徒歩の移動も一苦労になる。正直俺もくたびれているのだが、軟弱な相棒が休みたいと騒ぐのでなんとなく意地で歩き続けている。汗がしみた服が痒く臭い体にへばりつく。嫌がる足を前へ前へと進めていると隣の相棒が、顔も体も塩まみれだぜ、とぼや…

効果あり(ss)

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この一週間ほどオレと相棒は目当ての賞金首を探しつつ移動を繰り返していた。一帯が平穏な場所なのかケンカを売る忍びも見当たらず、暑いし雨は降るし虫には食われるしで地味にストレスを溜めていたオレは、憂さ晴らしに相棒にちょっかいを出すことにした。…

ぐぬぬ(ss)

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角都と飛段が訪れた宝飾店はたいそう混んでいた。情報屋を兼業する店主は忙しそうだ。客が切れるまで待つことにし、角都はベンチに腰を下ろして先ほど購入した古書を開いた。飛段は店内をうろうろしていたが、そのうち女の客と話し始めた。角都は横目で伺っ…

衛生・サック・だと?(ss)

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地方の金融機関が新聞にチラシを折りこんできた。大きなゴシック文字で刷られた0.03という字を見るともなく見ていると、隣にしゃがんだ若い相棒が、そりゃねーわ、と言った。今どき0.03はねーだろ、こないだ見たときは0.01だったぜ。阿呆だと思っていた相棒…

逆転(ss)

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朝、川辺で角都が水を浴びていた。当たり前だが真っ裸だ。目が覚めたばかりのオレはまずそれを眺め、次いで服を脱ぐと奴の背後からそっと忍び寄った。オレの竿は公衆便所の落書きみたいに上を向いていた。そんな状態であとさき考えろってのは無理な話だ。そ…

コンビ(ss)

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請け負った殺しをしくじった。相手を侮った飛段が陣を踏み外した隙に逃げられたのだが、角都のフォローも遅れたからどちらもどちらなのだ。角都と飛段は再度獲物を追ったがつかまえることができず、自分たちの失敗を認めざるをえなくなった。依頼主から受け…

やりたいんならそう言えよ(ss)

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脚を揉め、と角都が唸る。やだね、と同じぐらい不愛想な声で飛段が返す。クソガキが、たまには年寄りを労わったらどうだ。ジジイならジジイらしくヨボヨボしてろっつーの、いちんちじゅう連れまわしやがってこっちがヨレヨレだぜ。ふん、では女でも呼んで揉…

引力(ss)

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道中落ち合った情報屋と角都の話がなかなか終わらない。しびれをきらしたオレは二人を置いて道を進む。太陽が照りつける岩山の小道はくねくねとして分岐し、見通しも悪い。だんだん不安になってきた。迷うのは平気だが角都とはぐれるのは避けたい。だが先に…

鼻血ブー(ss)

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ダメ元で今日はオレの誕生日だと言ってみた。プレゼントとかねーのォ、んじゃ一回テメーのケツ貸せよ、カネもかかんねーしいいだろ。オレがどれだけの希望を込めてこのセリフを口にしたのか角都にはわからなかったに違いない。それでも奴はこれから殺しに行…

「カマイタチってオカマのイタチみたいじゃね?」「バカが…」(ss)

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相手が放った攻撃をオレは避けなかった。チャクラのかたまりは複雑な刃物のように突進するオレの肩から腰までを切り裂き、半身をボロキレに変えたが、ぎりぎりで届いた鎌が奴の太腿から血をかすめ取ってきたので勝負はついた。陣に横たわって祈りを捧げ、目…

姫はじまらず(ss)

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愛撫がしつこいと文句を言ったら、気を悪くしたのか角都の野郎が意地になってその先へ進もうとしない。早くしろよいきてーんだよと怒るオレを背中から腕ごと抱きしめて覆いかぶさり、前と後ろを指でしつこくいじってくる。オレだっていく気まんまんだから時…

新年7(ss)

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皆さま、あけましておめでとうございます。 昨年中は、管理者の部屋掃除並みの頻度でしか更新しないハキダメにお越しくださり、本当にありがとうございました。 本年もダメダメぶりをさらすことになると思いますが、今まで同様、お気が向かれたときにお立ち…

ほぼ二分間の勝負(パラレル)(ss)

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ウェブでタンゴの動画を見ててムラムラして書いたものです。知識も何もなく。いつものことですがすみません。 それでは皆様、良いお年をお迎えください。 ウェイターの給料がお粗末なので、オレは街角やプラザでタンゴを踊って日銭の足しにしている。知り合…

見捨てない(ss)

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道端でションベンしていたらひょろりとした野郎が寄ってきてクスリ買わないかと言った。なにやったことねえってマジで、兄さん人生損してるぜ、気の毒だから特別に安く分けてやるよ、ちょっとこっちへ来な。相棒を待つのに飽きていたオレはそいつについて行…

泣かされる(ss)

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行為の最中、仰向けの飛段がこちらへ腕を伸ばしてきた。口づけが欲しいときの癖なのだ。ゆっくりと頭を下げると奴は両手で俺の頬をはさみ、自分も上体を起こして顔を近づけてきた。ぺろりと唇を舐められてから口を吸われ、奴の親指が俺の目尻をなぞる。恥知…

にぶちん(ss)

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ほかに宿がないという理由で角都が高級旅館への宿泊を決めたのでオレは驚いたり喜んだりした。部屋は広くてきれいで静かだし運ばれてくる飯も申し分ない。酒も頼む。たいした散財ぶりだ。きっとただの気まぐれでどうせ明日はまたケチに戻るんだろうし、オレ…

直し方(ss)

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懐中電灯やテレビなどの調子が悪くなったとき、昔は叩いて直したものだった。接触不良やらホコリやらが原因の不調は叩けばたいがい直ったし、がたつく家具も叩けば落ち着いた。ところが最近の機器は叩いても一向に直らない。うんともすんとも言わないラジオ…

夏を惜しむ(ss)

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風が涼やかになった。広葉樹の葉は色を変え、日が暮れれば秋の虫がやかましく鳴き騒ぐ。なのに季節感のない阿呆な相棒が淵へ飛び込んでしまったので、角都は「先に行くぞー本当において行くぞ―」と脅しながら、しかたなく歩をゆるめる。じきに水から上がって…

ガス抜き(ss)

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ちょっとした言葉の応酬は小競り合いへ発展し、すぐに荒々しい喧嘩となった。ここしばらく戦闘らしいことをしていなかったせいか相棒はあからさまに興奮し、目を吊り上げ、笑いの形に口を開いて、力いっぱい武器を打ち込んできた。雑な攻撃だが俺は何度かま…

ツボ(ss)

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暑いからと飛段が行為を拒絶する。そして、テメーで勝手に抜け、などとひどいことを言う。だがすぐ隣に気持ちの良い体があるのに自分で処理するのは味気ない。なので俺は鍼灸図に適当に点を付け加えると、奴の前でそれを意味ありげに眺め、帳簿に挟んで卓上…

間髪入れず(ss)

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角都をからかっていたら本気で怒らせてしまった。ちょっとじゃれるだけのつもりだったオレはびびって奴をなだめようとする。かーくずちゃん、かーくずちゃん、にーらめっこしーましょ、なーぐったらまけよ、あっぷっぷ。言い終わるか終らないかのタイミング…

残暑の頃(ss)

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遅刻しました。角都さんお誕生日おめでとうございます。 換金所で暦を見て今日が自分の誕生日であることに気がついた角都は、その夜、相棒を誘ってやや歪んだ趣向の性的な遊びをした。遊び終えて横たわったまま一息ついていると、血まみれの相棒が隣で身を起…

自罰(ss)

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暗がりの中でさらに黒々とした巨木が熱風に枝をしならせる。怒る角都に飛段は言い返すが、その言葉は威勢がいいだけで中身がなく、強い風に簡単に吹き散らされる。生き残った奴なんかいやしねーよ、まったくジジイは心配性で困るぜ。討ち漏らしたやつがいな…